「うつ」と向きあって
〜その7「うつ」の状態 Lv.5〜

初めてのレッスンの日。

楽譜を持って、身支度をして、電車の時間を確認して、
準備万端、だったのだけど・・・。

出発の時間が近づくにつれて、胸が苦しく、頭が重くなってきた。
言いようのない不安感にさいなまれる。

きょうは・・・だめだ。そう思って先生に電話をした。
「申し訳ありません、今日は行かれそうにありません。」

「良いのよ、またこの次にいらっしゃいね。」
先生の普段と変わらぬ声にほっとした。

次のレッスンには、思いきって家を出た。
恐怖や不安をかき消すために、電車の中ではイアホンで音楽を聴き、
まわりの景色だけを見て人を気にしないようにした。
(自己防衛)

習志野までは遠かった。
でも、「歌いたい」という気持ちの方が恐怖に勝った。
先生は、バス停の近くまで出て待っていてくれた。嬉しかった。

その日は1時間、みっちりレッスンを受けて
久しぶりに気持ちよく声を出すことができた。
「全然衰えてなんかいないわよ、その調子でまた頑張ってね。」
先生の励ましに、ひとつの山を越えられた気がした。

それから、そのあと何回かのレッスンを受け、
歌う喜びの大きさに、習志野への道のりはどんどん短くなっていった。

レッスンに行かれたことで少し自信がつき、他にもやってみたいことを考え、実行した。

声楽のレッスンを月1〜2回受けに習志野に行った。
パソコンでどんどん絵を描いた。アニメにも挑戦してみた。
友達に会いに行った。関東方面に泊まりがけで行った。
千葉の海を見に行った。家族で行ったり、友達と行ったり。
少し長く一人で旅行をした。京都で静かな寺社や、山奥の渓流を見た。
PCーEXPOを見に行った。パソコンの最新情報を楽しんだ。

みんな、「自分自身のため」のことだった。
今までできなかったことだった。
仕事や家事・育児に追われてあきらめていたことだった。

少しずつ、私は「自分」を取り戻していった。

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