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1月末のある晴れた日。
一台の車がある学校にやってきた。

車の中には、たくさんの楽器。
積みおろしを手伝う。

重たい大きな袋には……いっぱいの川原の石。
別の袋には……太い竹筒が何本も。

「それ、重たいでしょう?無理しないでね、千曲川の川原の石だから。」

そう言って笑うのは、東信地区を中心に活動を続ける音楽家のオギタカさん。
日に焼けたその顔に浮かぶ柔らかな笑顔から、大地の香りがした。

わたしはこの日、彼の音楽活動のひとつである、ある学校での「音あそび教室」にご一緒させてもらった。

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ここで、簡単にオギタカさんのプロフィールをご紹介します。

オギタカ

作曲家。シンガーソングライター(ボーカル・ピアノ・ギター・ジャンベ・バラフォン・スティールパンなど)
映画音楽、舞台音楽、プレステーション等のゲーム音楽、TVやイベントのBGM等の幅広いジャンルの作曲を手がけている。

1966年長野県小諸市生まれ
中学時代、ブリティシュサウンドにはまりバンドを始める。
高校卒業後上京、ソロ活動や作曲の仕事をしながら世界各地の民族音楽にのめり込んで行く。
2000年拠点を小諸に移し、風土に根ざした曲や詩の制作を始める。
2003年よりモンゴルより伝わった地元民謡「正調小室節」を歌い始め、現在準師範。
2004年「音あそびの会」を発足。
現在、「ライブ」と「音あそび」の2本柱により長野各地で活動中。

(音あそびの会HP、オギタカプロフィールより)

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「大地のめぐみに ありがとう」
「いのちのつらなりに ありがとう」
「環になって 和になって おどろう」

オギタカさんがこの日、持っていた絵本「アフリカの音」の中の一節。

彼は、「音あそびの会」にいつもこの本を持っていくのです。
音あそびの会の中で、読み聞かせをすることもあります。

彼がなぜ、この本を持って歩いているのか、読み聞かせするのか……。
この本の中に彼が人々に音楽を通して伝えたい想いが詰まっているからかもしれません。

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「アフリカの音」はアフリカ人の思想(命や精神が循環していくことの大切さ)を音楽や祭りを通して表現している本だと思います。

「すべてが循環していくことの大切さ」・・・ここはキーポイントかな?

「アフリカの音」に「命のつらなり ありがとう」みたいのがあったと思うけど・・・
命だけでなくすべての事はつながっていて、つながることで大きな意味が出てくると思うのです。

現代の日本社会が忘れてしまったこと・・・・
昔で言えば子供は友だちとの遊びを通して自然に身に付いてきたものや、大人も地域とのつながりによって育んできたものがある。

それが希薄になって来ている現代は孤独な人や独善的な人が増えているように思えます。

みんながどんな壁も関係なくフラットに付き合えたらもっと楽しく、もっと豊かな世の中になると思います。
それは僕が障害のある子供を持ったからより強くそう思うのかもしれません。

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オギタカさんに、ご自分のもろもろの活動にむける想いをお聞きしたら、こういう答えが返ってきました。

一昨年、あるイベントをきっかけにオギタカさんと出会いました。
そして、オギタカさんの音を聴きました。

初めていったライブは室内のものでしたが、その次に聴いた音は飯綱高原の大座法師池の上に設置されたステージでのもの。

どちらのライブも素晴らしかったのですが、オギタカさんの音楽に対して持っている想い、人に伝えようとしている鼓動、それが、この野外ステージでのライブでびりびりと伝わり、飯綱の森の中に染みこんでいったその感覚が忘れられなかったのです。

アフリカの楽器を中心にして彼が放つ音は、まるで大地の鼓動や風の歌のように聞こえ、木々のゆらぎや水のさざめきがそれを彩っていました。
次第に暮れていく周りの景色全体が音楽の中にとけ込んでいく感じ。
自分もまた、その景色の中に組み込まれて一体化していく不思議な感覚がそこにありました。

アフリカの人々は、楽器を使って会話をします。
祭の中に、神への感謝、生きることの喜びを歌い上げるときにも、楽器をかき鳴らします。
音楽とは、単なる表現ではない。命の叫びです。歓喜の声です。

オギタカさんは、自分の音楽活動を通して、こういうものを人々に伝え、届け、感じてもらう活動をしているのだ……と、私はそう感じました。

そんなオギタカさんの音楽活動を、ここから少し追いかけてみたいと思います。

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オギタカさんの想いは、さらにこう続きます。

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音あそびは「ひと時の夢」なのだと思います。
でも参加者がその中で何か感じ取って、それが心のどこかにすこしでも残ってくれれば嬉しいです。
もちろん義務でやっているわけではないので一番楽しんでるのは僕自身なんですけねどね(笑)

ライブに関しては好き勝手にやってるだけです。
自己表現としてあまり色んな観念に縛られたくないと言うが本当のところです。
でも音あそびから得たグッドバイブレーションが自然にライブに反映されることは望みです。

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オギタカさんのライブは確かに、とても自由な感じです。
音楽の時間の勉強のように、音符や拍子にはずれないようにと頑張る感じではなくて。
そういうものにとらわれない、自分の中にある気持ちや心の動きをそのまま音にのせてお客さんに投げかける。

だから、それを受け止めるお客さんたちも、だんだん自分の中にある想いを手拍子や足拍子で一緒に表現し……時には踊り出す人もいて、にぎやかにみんなで音を共有する。

オギタカさんを中心に、「音」がさざ波となって会場全体にひろがっていく、そんな感じなのです。

そして、この日の音あそびでも……そんな様子があちこちに見られました。

まずは、ジャンベで「リズムでの会話」を楽しみます。
ジャンベというのはアフリカの太鼓。
この楽器の音の出し方、どんなふうに何を表現するのに使われるのか。
そんな簡単な説明のあとでみんなが一斉にたたきます。

最初はしかめっ面で、遠慮がちにたたいていた生徒の顔が……どんどん生き生きとしてくる。
「これでいいのかなぁ?」と困ったような顔が、リズムに集中しているうちに次第に和らいで、ほころんでくる。

二つのリズムの掛け合わせで、相手のリズムに答え、合わせてたたいているうちに、ほおが上気して、眼がキラキラして。

「楽しい!!」という感じが教室に満ちあふれてくる。

硬かった体の動きも、だんだんリズムに乗って軽やかになり。
部屋の中は、飛び跳ねる音でいっぱいになります。

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オギタカさんが手に持っているのは……冒頭に書いた「千曲川の川原の石」。
オギタカさんにかかるとこれだって立派な「楽器」になるのです。

両手に持ってたたき合わせると鳴る音。
細かいリズム、ゆったりしたリズム。
こすり合わせてでるかすかな音、投げて床に落ちる音。
みんなそれも「音」………「音楽」なのです。

たたき方。
頭の上でたたいたり、背中に手を回してたたいたり。
それを見てみんな笑顔で真似をします。
あいさつがわりに隣の人と、軽く合わせて出す「コン」という音も。
みんな人と人とをつなぐ音です。

音の輪が、どんどん広がっていくのです。

木琴のような楽器は、あとでご紹介しますが「バラフォン」です。
まるで瞑想の世界に誘うような音がでます。

たくさん転がっている千曲川の石。
さっきまで、みんなしっかり握りしめて、いろいろな音を奏でていました。

そしてバラフォンと石の間にあるのは竹筒。
これもまた……ほんとにステキな楽器に変わります。

一人一本ずつ竹の筒を持って。
そうして何人かのグループになって、順番にならしていきます。
不思議な音のつながりが輪になって、あちこちのグループから聞こえてきます。

自分の順番をはずさないように。
強く、弱く。
いろんな表情でならします。

途切れることのない音の輪は、まるで音にのせた気持ちのリレーのようです。
みんなでグループの他の人の出す音を聴きながら、自分の音の順番を待ち、そうしてその「和」を崩さないように上手く次につなげる音を出すのです。

たまに失敗して笑い声が起こるのも、ご愛敬。
それもまた、他のグループの竹のメロディーに組み込まれて新しいハーモニーが生まれます。

そうして最初は緊張の中に始まった「音あそび」は、部屋いっぱいの笑顔があふれる中、オギタカさんからのプレゼントで終わるのです。

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オギタカさんのミニライブ。

しっとりした曲、手拍子しながらのノリノリの曲。
音楽を最後にみんなに贈って、この日の「音あそび」のプログラムは終わり。

でも………
プログラムが終わった後も、片付けまでまだまだ音あそびは続くのです。

音と笑顔でつながった生徒さんたちは………
片付けを待つバラフォンのバチを手にとって「これ、鳴らしてみてもいいですか?」と奏で始めました。

自由にいろいろな音を鳴らしながら。
友だちと向かい合って。

「気持ちいい~~~~。」
「楽しい~~~~~。」

この日、シメの笑顔とやさしいバラフォンの音色で音あそびが終了しました。

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オギタカさんの音でつながる活動は、このあともまだまだ続きます。

障害を持つ子供たちとつながったり、いろんなジャンルのピアニストとつながったり、
本当にいろいろな人々と、音でつながっていくのです。

そんなオギタカさんの活動を、この先ももうちょっと追いかけてみようと思います。

<「音あそびの会」HP> http://oto-asobi.main.jp/

<今後の活動予定>

2月28日(日)ピアノ・ア・ラ・モード  ~5人のピアニストによるジャンルMIXライブ~
会場:佐久市なんだ館(0267-88-5010)

4月24日(土)アースデイin佐久
会場:佐久ミレニアムパーク(佐久平駅蓼科口西)

(文・写真 駒村みどり)

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