2-5まるでジェットコースター。

実は、このオーディオバイオグラフィー【羅針盤】は、単なる一問一答式のインタビューではありません。

N-ex Talking Overや文化庁の事業を通じて目にした多くの可能性と、山のような課題。

それを目の当たりにしてきた宮内氏が自らの中にある問題意識を持って、その「可能性」を導くためのアイディアと課題を乗り越えるためのアイディアとを六名の人々から引き出していく「対論」。

つまり、宮内氏と向かい合う各氏、二人の会話の中からお互いの持っている経験や想い、アイディア、そういったものがぶつかり合い、絡み合ってどんどん拡がっていくものなのです。いわばTalking Overの根本の「立場や想いの異なる人たちの自由な討論」を基盤に置いたものなのです。

この「対論」形式による音声収録は、ものすごく面白い効果をもたらしてくれました。

この六名の皆さんは、長野県の中でも「よく知られた」存在。様々な講演会やインタビュー記事に登場することも多い方々です。収録当日にお会いするときにはそこからのイメージがあって、どちらかというと「雲の上の人々」という感覚で対するのですが、それはお会いした最初のうちだけ。

宮内氏との対論が進む上で、次第にその「人間味」のある部分がどんどん引っ張り出されてくるのです。いわば「よそ行き顔」で登場した各氏の表情が、まるで少年のようにきらきらしてくるのです。そうしてはずむ会話のやりとりの高揚感が、その場にいる私にも手にとるように伝わってきました。

それは、その場にいた私だけのものではなかったようです。

たとえば、この音声を編集して収録したCDの試作品を聞いた星野リゾートの広報担当の方から「お二人の話がどんどん盛り上がっていって、そのスピード感が楽しかったです。まるでジェットコースターに乗っているみたいな感じでした。」という言葉をいただきましたが、星野氏の日頃の語りとは何か違った感覚がこの対論から感じられたのでしょう。

対面する前は雲の上の存在だったこの「成功した人々」が、なぜ成功したのか……その答えがこの対論の中で見えてきたような気がしました。

ここで対論を交わした人々は何か特別なことができるわけでも、スーパーマンでも、仙人でもありませんでした。「観光カリスマ」といわれている星野氏も、「小布施町並み作り」が全国から注目されるところまで高めた市村氏も。この対論の中では肩肘張った“すごい人”というよりも、どちらかというと気さくな人々でした。

なぜ、この気さくな人たちが「やり遂げる」ことが出来たのか……。

何かをやり遂げるのは、特別な技術や才能が必要なわけではないのです。自分の身のまわりにあることをきちんと受けとめて、当たり前のことを当たり前と流さず、自分の持っているビジョンや信念としっかり絡めてより確実でしっかりした「イメージ」を持ち、それを人々にわかる形で、伝わる形で、表現することができる人々……。

つまり、「当たり前のことを、イメージに沿った信念を持ってあきらめずやり遂げる人々」だったのです。

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Photo : Midori Komamura

5 まるでジェットコースター。〜人間味を引っ張り出す対論〜

この【羅針盤】のを形にしていく上で大切にしたことが二つありました。

一つは、映像でも活字でもない「音声での収録」(それも、できるだけ編集はしないもの)にすること。
もう一つは、長野県という土地と、そこに住む人々をきちんと「イメージ」した事業を展開・成功させている人を選ぶこと。

今の世の中、映像があふれています。それはイメージを共有化し、情報をより正確に詳細に伝えるためにとても効果的な手段です。けれども、裏を返すとそれは「イメージの押しつけ」にもなるのです。

美しい風景としてテレビで映した画面のすぐ横には、ごみが落ちているかもしれない。泣いて悲しんでいる人の写真の裏側には、それを見て笑っている人がいるのかもしれない。

与えられた映像というのはそれを創り出したものの「イメージ」が介入したものであり、そこに良くも悪くもある「意図」が組み込まれます。つまり「事実そのもの」を伝えるものではないのです。

この【羅針盤】では、その「イメージの押しつけ」状態を極力排除しました。映像にすると、とったカットや場所によって見るものに「固定イメージ」を与えることになります。また、そこで得た情報を活字化し、本にしたら、話し言葉と書き言葉の与えるイメージも、文にまとめるものの「意図」がからまってきて本来の事実そのものと違ったイメージを与える可能性があります。

人の話す言葉には、「言霊」があって、その人の想いや命が載った言葉が体温を持って相手に届くもの。

それを出来るだけ正確に、その人が自身のアイディアやイメージを語る言葉をそのイントネーションや音の響き、さらにその場の空気感も丸ごと含めて人に届けたい。それを聞くこと、感じることで、その人の人柄や言葉の重みから生まれるイメージもあるはずだ……。

オーディオバイオグラフィーという発想は、そこから生まれました。

もう一つの観点である「人や土地を大切にした」という部分。

N-ex Talking Overや文化庁の事業を進める上で今の世の中がなかなか明るいイメージを持てないのはこの部分が足りないため。またそういう想いを持って人の笑顔を思い描いた活動をしている人々がぶち当たる厚くて大きな壁も、この部分への理解が得られず、それをイメージできない社会の事情に阻まれがちだからです。

その壁をぶち破って、自身の事業を展開し、成功に持っていくことの出来た人々の持っているパワーやアイディアは今なかなか進めない人々に何らかのイメージをもたらしてくれるでしょう。それだけの力を与えてくれる人々が、ちゃんと身近にいるのだ、ということを知るだけでも大きな力になるでしょう。

ジェットコースター

Photo : Midori Komamura

目次

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PROFILE

駒村みどり
【すまいるコーディネーター】

音楽活動(指導・演奏)、カウンセリングや学習指導、うつ病や不登校についての理解を深める活動、長野県の地域おこし・文化・アート活動の取材などを軸に、人の心を大切にし人と人とを繋ぎ拡げる活動を展開中。

信州あそびの学園 代表

Twitter:komacafe 
HP:コマちゃんのティールーム
  信州あそびの学園

facebook:Midori Komamura
     信州あそびの学園
笑顔をつなぐスマイルコーディネーター

アメブロ:【うつのくれた贈り物】


WebマガジンNgene特派員
(長野県の文化、教育、地域活性化などに関わる活動・人の取材)
【羅針盤】プロジェクトリーダー。

詳細は【PRPFILE】駒村みどりに記載。

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