セガレプロジェクト

東京での山本さんのお仕事は、広告会社のプランナー。取りかかったのは実家のりんごジュースの「ラベル作り」。お友達に協力を仰ぎながらラベルのデザイン、ジュースのネーミングを考え、屋号をブランド化してデザインに組み込んで……と、まさに、彼の日頃の仕事はそのままご実家の実りへとつながっていきました。

この山本さんの取り組みは、ちょうどその頃セガレプロジェクトの取材に入っていたNHKでも番組として取り上げられ、ラベルが完成してはじめてセガレのマーケットで販売された「山本園のりんごジュース」は試飲した人たちから好評でたくさんの人が購入、それを体験した山本さんは、感激で涙が出そうだったといいます。

一方、NHKの放映の影響もあってその後もご実家のりんごジュースの売れ行きは好調。ご実家の両親の喜びようもひとしおで、それによって何より山本さん自身が「実家のために自分も役に立てた」という充実感を得る事が出来たのです。

親と子のつながり、農家のあり方。いろいろな形があって、いろいろなつながり方があって。無理をして家に戻って家で働くこともひとつかもしれないけれど、こんな形もあるのかもしれない。そういうイメージを持つことが出来た今は、以前の後ろめたさは消え去って、自分に出来ることを無理せず自分らしくやっていこう……と東京で今日も自分の仕事に、セガレプロジェクトの活動に、自分が出来ることを出来る範囲で「楽しく」取り組む毎日を送っているのです。

セガレプロジェクトのメンバーは、山本さんだけではなく皆、そんな風に「自分に出来ることを楽しみながら」無理せずやっています。自分の想いや自分の現状を曲げてまで無理して継ぐことばかりが親孝行ではなく。ほんとうの意味で、「楽しく豊かに」暮らす、ということを考えたらいろいろな形が見えてくる……。

セガレプロジェクトが今の世の中に発信しているイメージは、そういうあたらしい親と子の絆や、農家のあり方へのアイディアを日々さまざまなセガレ、セガールたちだけでなく、大都市志向、消費社会・流通社会の中で翻弄されて疲れはじめた日本の社会に提供してくれているように思います。

昨夏のバーベキューでは、そんな都会のセガレたちと長野県で実際に今、試行錯誤をしている農家のセガレたちが交流を持ったのです。都会のセガレと田舎のセガレがつながって、あたらしい何かが生まれそうな可能性で満たされた当日の会場でした。ここから先、どんなイメージからどんなアイディアが生まれていくのでしょう。このつながりが拡がって、何が生まれてくるのでしょう。

会場の熱気は、バーベキューコンロの熱や、夏の暑さからのものだけではない……とても明るくたくましい熱の高まりが、日本はまだまだこれからだよ!と教えてくれているような気がしました。

N-gene詳細記事:
「なから」がもたらす可能性(1)~セガレとセガレのBBQ
「なから」がもたらす可能性(2)~セガレとセガレのBBQ

セガレBBQ

Photo : Midori Komamura

(3) 「イメージ」がつなげる親子のきずな 「セガレプロジェクト」

「ずっと、実家の両親には申し訳ないという後ろめたさがありました。」

そう語ったのは、昨年の夏の初めに菅平高原で出会った山本圭介さんです。この日、菅平では40名ほどの若者たちがバーベキューを囲んでにぎやかに交流しました。

この集まりは「セガレ」メンバーの集まり。「セガレ」とは何かといったら……いわゆる農家の二代目世代たち……要するに、農家のセガレたちのグループです。

大都会東京に出ていって、実家でそれまで当たり前のように触れていた「農」と切り離れた生活をしていたけれど、「実家で何作っているの?」という会話をきっかけにつながった3人の「農家のセガレ」。

ちょうど当時、「食の安全」に対しての社会の認識が強まっていたこともあってその3人で「都会では農に関してプロ並みの自分たち。実家で丹精している作物をそういう自分たちが売ったらどうなるだろう?」と思って有楽町の「市」で販売してみたら、完売。

「これはいけるのかもしれない」

そうして始まったのが「セガレプロジェクト」。3人の周りには、同じように実家が農家で、でも都会の大学や会社にでてきて実家とは離れていて、帰りたいけど帰れなかったり、迷っていたり、という「セガレ」や「セガール」たちがどんどん集まって、今では50〜70名ものメンバーが参加しています。

山本さんは、そのうちの一人。実家は志賀高原の麓でりんごと巨峰を作っています。
3人兄弟の真ん中で、お兄さんも東京。実家の農家は一番下の弟さんが手伝っていて、ずっと「弟や実家に申し訳ない」という後ろめたさを抱えていました。

そんな時に友人に教えられてこのセガレプロジェクトのHPを見た山本さん。

「自分と同じような立場の人たちが自分と同じ境遇で実家を継がずに東京で働いているにも関わらず、マーケットで実家の野菜を売ったり商品をブランド化したり、東京で働きながらでもちゃんとアクションを起こしている人がいる。自分も今の環境のままで実家に対して何かできることがあるんじゃないか」。

その“なにか自分もできるかもしれない”という「イメージ」は、山本さんをこのプロジェクトへの関わりへと駆り立てました。

2010年の4月、セガレのホームページに自由大学でセガレの講義(セガレ日和)開催の案内を見て参加。実際に活動しているセガレメンバーに加わって交流するうちにふくらんできた想い。

五回目のセガレ日和、自分だったらどんなアクションが出来る?というテーマの「自分プロジェクト」の発表で、山本さんは自分の出来ることとして「実家と東京をつなげ、実家を楽しくするために」……というイメージのもとに考えたのが「山本園ブランド化計画」。

☆実家(山本園)の作物をブランド化。
☆実家からの直販ではできない“付加価値”をつけて作物をより魅力ある商品に仕立てる。
☆ブランド化した“付加価値”を実家に還元する。

という3つの柱をもとに、実家で作っているりんごジュースのブランド化を企画します。それまでは実家のりんごジュースの売り先は知り合いからの受注だけで、どこかに卸しているわけでもなく、ラベルのない瓶そのままで販売していたそうです。

農作物を「作ること」にはこだわりがあってもそれを「売ること」は視野になく、農協に卸してそれでおしまい、どこの誰が食べているのかもわからない、そんなご実家の状況を見ていて疑問を感じていた山本さん。

きちんとブランド化して直接販路を開拓したら多少高くも売れるだろうし、食べてくれる人の顔も見えるし、買う方からしても安心感がある。日本の農業はそういう方向へ向かうべき……とずっと持ち続けていたイメージが、ここで実際の形として動き始めたのです。

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駒村みどり
【スマイルコーディネーター】

音楽活動(指導・演奏)、カウンセリングや学習指導、うつ病や不登校についての理解を深める活動、長野県の地域おこし・文化・アート活動の取材などを軸に、人の心を大切にし人と人とを繋ぎ拡げる活動を展開中。

信州あそびの杜学園長

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  信州あそびの杜学園

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笑顔をつなぐスマイルコーディネーター

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WebマガジンNgene特派員
(長野県の文化、教育、地域活性化などに関わる活動・人の取材)
【羅針盤】プロジェクトリーダー。

詳細は【PRPFILE】駒村みどりに記載。

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