INTERMEZZO4.「パワースポット」について。
ここで述べている「地脈」というのは昨今ブームになっている「パワースポット」のパワーに通じるものです。「パワースポット」が紹介されるとそこに人が殺到するけれど、この状況は非常に残念であると共に大きな懸念をもってしまうのです。
本来「土」にはどの土地でも「力」があったはず。地脈といわれるものはどの土地にもあるはずのもの。そもそも同じ地球の上で、大地はどこまでもつながっているわけで、地球はその内部に「核」を持ち、その核を中心に大地まで層をなしているのです。もともと一つのものから出来上がっているその地球で、源が同じであると考えればここだけ力があるとか無いとか騒ぐのはおかしなことではないでしょうか。
けれど、たとえばさっきも書いたが都会の真ん中に立っても大地の力を感じられない、長野で今人が殺到している戸隠の大地とは雲泥の差……。そういう「事実」はなぜ発生しているのでしょう。
都会のコンクリートで固められて、隔絶されて日も当たらない土からは、力を感じられないのは当然のこと。そういう状況を創りだしたのは、もともとちゃんと大地のパワーを感じとることも出来ないまま、自分たちの利便性のみを追求して自分勝手に環境を作りかえてしまった人間の仕業なのです。
そういう事実を踏まえずに、今、そういう間違った開発からかろうじて土地の人間が必死で守ってきた「パワーが残っている土地」に単なるブームだからと人が殺到しています。現に戸隠では例年の三倍の人間が押し寄せて、戸隠そばのお店は行列で一時間待ちはざらだそう。毎年ここを訪れる「常連」が今年は訪問をためらったり敬遠したり押しのけられたりする状態も発生しているらしいのです。
常連の人々は元々はちゃんとこの戸隠の地脈(パワー)を感じ、それを真に求めるからやってくる人々なのでしょう。一方で「パワースポットブーム」という形に乗せられ、一時期のうたい文句に踊らされてやって来た人たちがちゃんとパワーを感じて帰るのだったらまだいいけれど、果たしてどうなることでしょう?
交通の便が悪くて車で殺到し、排気ガスを例年の三倍まき散らされて人に三倍踏み荒らされて、普段は静寂に包まれた杉並木も物音が三倍増えて、駐車場やそばやの混雑で待ち時間にイライラする人々の負の気がどっとまき散らされたら……戸隠がここまで守ってきた「気」はどうなることでしょう。果たして耐えきれるのでしょうか。
願わくば、このブームによって土地の持つ本来の「気」をちゃんと受けとめられる人が一人でも増えて欲しいのです。そして、自分が毎日生活している土地にも、本来はちゃんと「気」があって、元気がなかったり弱められたりしている原因に目を止め、本来の気を取り戻そうという思いに結びつくことになっていったら、このブームがものすごく意味のあるものになるのだけれど……。
地脈は、日本だけでなく世界中を繋いでいる。地球上に本来は脈々とあまねく流れているもの。
その地脈を打ち消し、つぶす行為をするのはヒトだけなんです。ブームと騒ぐその前に、なぜ「一部の場所でしかパワーを感じ取れなくなってしまったのか」という問いに耳をかたむけ、真剣に頭をひねってイメージする人が1人でも増えてくれれば嬉しいなぁ、と思う今日この頃なのです。