「ねえ、イメージできる?」
これは2005年に日本テレビで放送された「女王の教室」というドラマに登場する鬼教師、阿久津真矢(天海祐希)がよく口にしたセリフ。
この「女王の教室」というドラマは、当時かなりの物議を醸しました。
小学校の教室で、子供にとっては絶対の存在である担任。その担任がまるで専制君主のように生徒を支配し、命令し、懲罰も体罰も平然と行い、意図的に「差別構造」を創り上げ、そして子供同士の対立や不信感を煽っていく……。
日本の社会では当時すでに学校の権威は地に落ち、教師は親や教育委員会に囲まれて板挟み。「三歩下がって師の影踏まず」といったかつての「教育者への敬意」などはもう神話の時代の作り事。そんな時代に、まるで世の中を煽るような過激で冷酷な阿久津真矢の教育のあり方とこのドラマはPTAの団体などから非難を浴び、ドラマのスポンサーもクレジットを表示しなくなるなどの異例の状態を巻き起こしました。
実際、毎週欠かさずこれを見ていた私の横に、それまでは1話目を一緒に観ていた子供たちは怖さの余り、それ以降一度も近づきませんでした。それまで「教育ドラマ」というと、人間味にあふれた教師が悩み多き生徒を温かく見守り、包み、支えてその成長に涙する心温まるものばかりだったので、私にとってもかなりの衝撃ではありました。
けれど、なぜ私が見続けたか。……そのドラマの根底に流れているものが非常に興味深かったから。つまり「テーマ」。実は、日頃私自身が教師として学校のなかで、もっと言うと親として、社会に生きる人間として、毎日の生活のなかで心の奥で感じていた「危機感」に対しての警鐘をこのドラマが激しく鳴らしているように感じたから。
その根拠となる一つが、この真矢のセリフ「イメージできる?」であり、もう一つのセリフ「いいかげん目覚めなさい」でした。
そしてずっと前から漠然と感じていた「危機感」を持ちながら見ていると、このドラマのテーマがそこにぴったりと寄り添ってくるのです。つまり、真矢の教室で起こっていること、それは日本の教育現場で起こっていることそのままの事象……いじめ、差別、成績至上主義……であり、もっというと “今、日本の社会が陥っている状態”まさにそのものでもあったのです。
毎日のニュースで報道される悲惨な事件。理不尽な事件。人を導くべきものが人を貶め、まじめに頑張るものが踏みにじられ、人を人と思わないものがのさばっていく……。それが今の日本の社会。その事象がそのままに、ここに展開されていたのです。
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