2010年 11月 16日

そんなこの社会を生き抜くためにどうしたらいいのか、という方法を探すと、たとえば本屋の店頭に並ぶのは「誉め上手」とか「空気を読む」とかいう“無難な方法”ばかり。何かの事件が起こると「誰が悪かったのか」という討論に終始し、ではなぜその「悪いこと」に至ってしまったのかという根本に迫る議論はほとんど見あたらない。だから不祥事に対しての始末は「すみませんでした」と頭を下げ、責任をとって誰かがやめるだけで終結し、罪を犯したものが刑罰を受けることで納得し、悪者が消えたことで世論は次の刺激に興味が移ってしまう。

もう延々と続くこの光景。何度となく繰り返されるこの茶番に対して人々はもう慣れてしまってそれを茶番とも想わない……つまり、私たちの社会は今、それが「おかしい」とイメージする力さえ失う状態に陥ってしまっているのです。

この問題は、どこか遠くに起きたことであって自分たちのことではない、と自分たちの問題としての「イメージ」が出来ない。だから、実は自分の身近でも似たようなことが起こっているのに気が付かない。その根本にあるものは実はすべて「同じ問題」であって、それをすぐに根っこから掘り返して覆さないと、自分の周りでも「現実」になり得ることなのに……もしかしたら、今すぐにでも。

さらに、大人たち……「社会全体」がイメージする力を失ってしまったため、その影響をもろにかぶってしまったのが「子供たち」。そもそも子供たちはイメージの固まりのような存在。イメージがなくては生きて行かれない存在。その子供たちの周りからどんどんイメージが失われ、イメージすることが誤りであるかのような錯覚さえも植え付けられつつある。苦しくなる。当然子供たちは息もできなくなる。

もうひとつ。学力を支え、伸ばす一番の力が「イメージ力」。子供たちの学力低下が叫ばれて久しいけれど、子供たちのイメージ力の低下を叫ぶものは皆無に等しい。学力の低下、それはイメージ力の低下が大きな原因。今すぐに、それを取り戻す努力をはじめないと手遅れになる。いや、もうすでにかなり危機的な状況である。さらにイメージ力というのは簡単に付くものではない。だから、今すぐ、それに気が付いたものが今すぐに、始めないと手遅れになってしまう……。

このイメージ力を取り戻すこと、それ以外に子供たちの学力を取り戻し、学校を再生させ、さらに社会をよみがえらせる方法はないのです。だから、それを今すぐにはじめないと。まずこれを読んだあなたが。そしてあなたの周りの人間が。そうすることで確実に、子供たちも、学校も、社会も「明るい未来」への道に一歩を踏み出すことが出来るのです。

Photo : Midori Komamura

「ねえ、イメージできる?」

これは2005年に日本テレビで放送された「女王の教室」というドラマに登場する鬼教師、阿久津真矢(天海祐希)がよく口にしたセリフ。

この「女王の教室」というドラマは、当時かなりの物議を醸しました。

小学校の教室で、子供にとっては絶対の存在である担任。その担任がまるで専制君主のように生徒を支配し、命令し、懲罰も体罰も平然と行い、意図的に「差別構造」を創り上げ、そして子供同士の対立や不信感を煽っていく……。

日本の社会では当時すでに学校の権威は地に落ち、教師は親や教育委員会に囲まれて板挟み。「三歩下がって師の影踏まず」といったかつての「教育者への敬意」などはもう神話の時代の作り事。そんな時代に、まるで世の中を煽るような過激で冷酷な阿久津真矢の教育のあり方とこのドラマはPTAの団体などから非難を浴び、ドラマのスポンサーもクレジットを表示しなくなるなどの異例の状態を巻き起こしました。

実際、毎週欠かさずこれを見ていた私の横に、それまでは1話目を一緒に観ていた子供たちは怖さの余り、それ以降一度も近づきませんでした。それまで「教育ドラマ」というと、人間味にあふれた教師が悩み多き生徒を温かく見守り、包み、支えてその成長に涙する心温まるものばかりだったので、私にとってもかなりの衝撃ではありました。

けれど、なぜ私が見続けたか。……そのドラマの根底に流れているものが非常に興味深かったから。つまり「テーマ」。実は、日頃私自身が教師として学校のなかで、もっと言うと親として、社会に生きる人間として、毎日の生活のなかで心の奥で感じていた「危機感」に対しての警鐘をこのドラマが激しく鳴らしているように感じたから。

その根拠となる一つが、この真矢のセリフ「イメージできる?」であり、もう一つのセリフ「いいかげん目覚めなさい」でした。

そしてずっと前から漠然と感じていた「危機感」を持ちながら見ていると、このドラマのテーマがそこにぴったりと寄り添ってくるのです。つまり、真矢の教室で起こっていること、それは日本の教育現場で起こっていることそのままの事象……いじめ、差別、成績至上主義……であり、もっというと “今、日本の社会が陥っている状態”まさにそのものでもあったのです。

毎日のニュースで報道される悲惨な事件。理不尽な事件。人を導くべきものが人を貶め、まじめに頑張るものが踏みにじられ、人を人と思わないものがのさばっていく……。それが今の日本の社会。その事象がそのままに、ここに展開されていたのです。

Photo : Midori Komamura

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PROFILE

駒村みどり
【すまいるコーディネーター】

音楽活動(指導・演奏)、カウンセリングや学習指導、うつ病や不登校についての理解を深める活動、長野県の地域おこし・文化・アート活動の取材などを軸に、人の心を大切にし人と人とを繋ぎ拡げる活動を展開中。

信州あそびの学園 代表

Twitter:komacafe 
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笑顔をつなぐスマイルコーディネーター

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WebマガジンNgene特派員
(長野県の文化、教育、地域活性化などに関わる活動・人の取材)
【羅針盤】プロジェクトリーダー。

詳細は【PRPFILE】駒村みどりに記載。

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